動作改善指導とは
動作を改善するということはどういうことでしょうか?
それは、経験したことのない新たな動作を経験させ、それを繰り返して定着させるということです。
経験したことがない動作を行わせるのですから、ただ「こうしなさい」と言ってもできるものではありません。その動作を実現する練習方法を具体的に示す必要があります。そのためには、「実現させたい動作はどのような仕組みで行われているのか」、「現在の動作はどのような仕組みで起こっているのか」、そして、「どうしたら必要な動きを引き出すことができるのか」など、動作の仕組みと身体の仕組みを十分に理解していなければなりません。
野球の動作は身体がやることですから、関節の動きのルール、効率のよいエネルギーの生み出し方の法則があります。その上で、「ここがこうなれば必ずこのように動く」という原理原則に基づいて、正しい動作が自動的にできてしまう方法、行いやすくなる方法を教え、新たな動作を経験させるのです。そして、1度できたものが2度に、2度が3度になり、徐々に何度やっても同じようにできるレベルまで新しい感覚を定着させ、それを、段階的に全体的な動作にまでつなげていきます。それが『動作改善指導』の基本的な手順であり、いわゆる『ドリル』と呼ばれるものです。
ドリルを行ったとき、そのドリルに必要な体勢がとれず、なかなか十分なレベルまで改善できない場合があります。これは、股関節や肩甲骨、胸郭などの関節を動かすための筋肉の働きが不十分であること、可働域が狭いことに原因がある場合がほとんどで、ドリルと並行して体操やトレーニングを行い身体の条件を改善していく必要があります。このように、まず、身体の使い方の改善を図り、それが上手くできない原因が身体の条件の不足にあるとき、トレーニングという形で補うのです。
トレーニングのような地道な取り組みはもちろん、直接的な動作改善練習においても、自宅での反復が欠かせません。反復練習をする取り組みが、動作の理解を深め、一旦習得した動作の定着と、さらに細かい課題への吸収力を高めることにつながるからです。
動作を改善する場合、ピッチングならネットに向かって投げること、バッティングなら素振りやスタンドティーのボールを打つことを中心に行う方がずっと効果的です。まずは、新たな身体の使い方の習得に集中させることが重要で、コントロールを気にしてしまう環境や、実際に飛んでくるボールを打つ環境では、動き慣れた今までの動作から抜け出せずにマイナスにしかならないからです。
長く野球の指導に携わってきた指導者であれば、フォームをひと目みれば、その選手のプレーの結果にどのような傾向があるか、ほとんど狂いなく分かってしまいます。それは、言い換えれば、身体の使い方がよくなれば必ず結果はついてくるということです。定期的に試合の映像や外での練習を見て、普段できている動作と実際のプレーの動作とのギャップの有無を確認しながら動作づくりを進めていけば、それだけでパフォーマンスの改善には十分です。
相手への対応が求められるバッティングでさえ、変化球が苦手なのも、詰まったり、泳いだりとタイミングが合わないことが多いのも、根本的なスイング軌道自体にほとんどの問題があり、ど真ん中の素振りを見れば、そこに現れています。ですから、ネットスローやティーバッティングで効果的な動作を習得できれば、それだけでかなりのレベルアップが可能であり、もっと言えば、ボールやバットを使わずに、畳一帖のスペースがあればできてしまうような動きづくりの練習が本当に大切なのです。