ピッチング動作の並進運動

『並進運動』とは簡単に言えば助走です。

助走をつければより遠くへ投げられるように、ピッチングの一歩のステップも、いかに助走と同じ効果を生み出すかということが、ステップ動作を行う一番大きな意味になります。勢いのあるステップによってより大きな『並進エネルギー』を生み出すことが、その後の鋭い骨盤の回転を生み、高速の腕の振りにつながっていくのです。

また、そのステップでは同時に「開かずに進む」ということが求められます。
それは、体幹の回転を生かして腕を振るために、その回転は着地後に一気に行いたいからです。

開かずに進むには、そのための身体の使い方があります。
人間が行う最も腰が開いたステップは、進行方向に腰を向けたまま進む『歩行』であり、最も腰が開いていないステップは、進行方向に背を向けたまま進む『バックステップ』です。投球動作の場合、真横向きから『歩行』のように進めば開き、『バックステップ』のように進めば開かないという単純な仕組みです。

この両者の違いを生んでいるのは、『歩行』が骨盤の後方に軸脚を送るのに対し、『バックステップ』は骨盤の前方に軸脚を送るという、軸脚の股関節の使い方の違いです。右投手なら、軸脚の股関節をショートと反対の方向に引き込み、その位置関係を保ったままステップしていけば開くことはないのです。

軸脚の股関節をこのように使うと、軸脚が骨盤を投球方向へ進め、その後から踏み出し脚が骨盤の移動に引き出されるように運ばれることになります。これがよく言われる「お尻から出ていく」という動作であり、このような軸脚主体のステップは勢いのあるステップをもたらす使い方でもあります。

つまり、軸脚股関節を『バックステップ』のように使うことで、「勢いよく進むこと」、「開かないこと」という、ステップに求められる2つのことが両立できるのです。

『回転運動』とは

野球の動作のメカニズム論【目次】

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